建設業許可を取得するためには、いくつかの要件を満たす必要があります。
その中の一つが、「誠実性」です。
誠実性という言葉だけを見ると、少し抽象的に感じるかもしれません。
しかし、建設業許可における誠実性は、単に「まじめそうに見える」「人柄が良い」という意味ではありません。
建設工事の請負契約を締結したり、契約に基づいて工事を履行したりするうえで、不正な行為や不誠実な行為をするおそれがないかを確認する要件です。
「過去に契約トラブルがあると許可は取れないのか」
「役員に過去の処分歴がある場合はどうなるのか」
「欠格要件に該当しなければ誠実性は問題ないのか」
「名義貸しや虚偽申請はどのように見られるのか」
「許可取得後も誠実性は関係するのか」
このような疑問をお持ちの建設業者様もいらっしゃると思います。
この記事では、建設業許可の主な要件の一つである「誠実性」について、基本的な考え方、不正な行為・不誠実な行為の意味、注意すべきケースをわかりやすく説明します。
建設業許可における誠実性とは
建設業許可における誠実性とは、建設工事の請負契約に関して、不正または不誠実な行為をするおそれが明らかでないことをいいます。
建設業では、請負契約に基づいて工事を行います。
契約金額が大きくなることもあり、発注者、元請業者、下請業者、取引先、工事関係者など、多くの人が関係します。
そのため、建設業許可では、経営体制、技術者、財産的基礎だけでなく、契約に関して誠実に対応できる事業者かどうかも確認されます。
ここでいう誠実性は、感覚的な評価ではなく、請負契約に関する過去の行為や、役員等の状況、法令違反の有無などから判断されるものです。
誠実性は誰について確認されるのか
誠実性は、許可を受けようとする会社や個人事業主だけでなく、建設業の営業取引において重要な地位にある人についても確認されます。
法人の場合には、会社そのものだけでなく、役員等についても確認されます。
個人事業主の場合には、本人や支配人などが問題になります。
建設業許可では、形式的に会社が要件を満たしているように見えても、実際に重要な判断をする役員等に問題がある場合には、許可要件に影響することがあります。
そのため、会社の申請であっても、役員の過去の処分歴や契約上のトラブルなどが問題になることがあります。
不正な行為とは
誠実性の要件で問題となる「不正な行為」とは、請負契約の締結や履行に関して、法律に反するような行為をすることをいいます。
たとえば、次のような行為が問題になることがあります。
・詐欺的な契約
・脅迫による契約
・横領
・虚偽の説明による契約
・実態と異なる内容で契約を結ぶ行為
・許可や資格があるように装う行為
・名義貸しに関係する行為
・虚偽の申請書類を提出する行為
建設業許可の申請では、事実と異なる内容で申請書を作成することは避けなければなりません。
たとえば、実際には常勤していない人を常勤役員等や営業所技術者として申請したり、実務経験の内容を実際と異なる形で記載したりすることは、重大な問題につながる可能性があります。
「許可を取るために少しだけ都合よく書く」という感覚で進めると、後で大きなリスクになることがあります。
不誠実な行為とは
不誠実な行為とは、請負契約に違反するような行為や、契約上の信頼を損なうような行為をいいます。
たとえば、次のようなケースが問題になることがあります。
・請負契約に反する工事を行う
・工事内容を故意に変える
・正当な理由なく工期を守らない
・手抜き工事を行う
・発注者や下請業者に重要な事実を説明しない
・契約内容と異なる請求をする
・下請代金の支払いを不当に遅らせる
・契約上の義務を繰り返し守らない
もちろん、工事では天候、資材不足、追加工事、現場状況の変化などにより、予定どおりに進まないこともあります。
単に工期が延びた、トラブルがあったというだけで、直ちに誠実性がないと判断されるわけではありません。
問題になるのは、請負契約に関して不正・不誠実な行為をするおそれが明らかといえるような場合です。
そのため、契約内容を明確にし、変更がある場合には書面や記録を残し、関係者に丁寧に説明することが大切です。
欠格要件とは別に確認されます
建設業許可では、欠格要件に該当しないことも重要です。
欠格要件とは、一定の刑罰や処分歴、破産手続開始決定を受けて復権していない場合など、法律上、許可を受けられない事情をいいます。
一方で、誠実性は、欠格要件とは別の要件です。
つまり、「欠格要件に該当しないから、誠実性は必ず問題ない」と単純に考えることはできません。
過去の請負契約に関する行為や、関連する法令上の処分歴などによっては、誠実性の要件で確認が必要になることがあります。
誠実性と欠格要件は似ている部分もありますが、同じものではありません。
過去の処分歴がある場合
過去に建設業法、建築士法、宅地建物取引業法など、建設・不動産に関係する法令に基づく処分を受けている場合には注意が必要です。
たとえば、不正または不誠実な行為により免許や登録の取消処分を受けた場合、一定期間、誠実性の判断に影響することがあります。
国土交通省の許可要件でも、誠実性は法人や個人だけでなく、建設業の営業取引において重要な地位にある役員等についても確認されるとされています。
そのため、申請会社自体に処分歴がない場合でも、役員等の過去の状況によって確認が必要になることがあります。
過去に処分歴がある場合は、自己判断で「もう関係ない」と考えるのではなく、いつ、どのような処分を受けたのか、現在の申請に影響する可能性があるのかを確認することが大切です。
契約トラブルがある場合はどうなるか
建設業を営んでいると、発注者や元請、下請との間でトラブルが起こることがあります。
契約トラブルが一度でもあれば、直ちに建設業許可が取れないというわけではありません。
たとえば、工事内容の認識違い、追加工事の範囲、支払時期、工期変更などで意見が合わないことは、実務上起こり得ます。
問題となるのは、契約に関して不正・不誠実な行為をするおそれが明らかと評価されるような事情がある場合です。
たとえば、同じような契約違反を繰り返している、虚偽説明をして契約を取っている、手抜き工事や代金不払いを繰り返している、行政処分や裁判上の判断があるといった場合には、慎重な確認が必要です。
契約トラブルがある場合は、事実関係を整理し、現在の申請に影響があるかどうかを確認することが大切です。
名義貸しは重大な問題になります
建設業許可に関して特に注意したいのが、名義貸しです。
たとえば、実際には経営に関与していない人を常勤役員等として申請したり、実際には勤務していない資格者を営業所技術者として届け出たりすることは、重大な問題につながる可能性があります。
建設業許可は、会社の実態に基づいて申請する必要があります。
資格を持っている人がいるように見せかけたり、経験があるように見せかけたりする申請は、誠実性だけでなく、虚偽申請や監督処分の問題にもつながりかねません。
「名前だけ借りればよい」
「実際には来ていないが、書類上だけ常勤にする」
「経験年数を少し多めに書く」
このような考え方は非常に危険です。
許可取得後に発覚した場合、許可の取消しや営業停止などのリスクが生じる可能性があります。
営業所技術者の要件については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
虚偽申請をしないことが重要です
建設業許可申請では、さまざまな書類を提出します。
常勤役員等、営業所技術者、財産的基礎、営業所の実態、社会保険の加入状況など、確認すべき事項は多くあります。
その中で、実態と異なる内容を記載したり、事実と異なる資料を提出したりすることは避けなければなりません。
特に注意したいのは、次のような点です。
・常勤していない人を常勤として申請しない
・経験していない工事を実務経験として記載しない
・実際に営業所として使っていない場所を営業所として申請しない
・存在しない契約書や請求書を作成しない
・社会保険の加入状況を実態と異なる形で説明しない
・過去の処分歴や重要な事情を隠さない
建設業許可は、取得することだけが目的ではありません。
許可を取得した後も、更新、業種追加、変更届、決算変更届、経審などで継続的に確認されることがあります。
最初の申請で無理な内容を入れてしまうと、後の手続きでつじつまが合わなくなることがあります。
誠実性は許可取得後も重要です
誠実性は、許可を取るときだけの問題ではありません。
建設業許可を取得した後も、請負契約を誠実に締結し、契約内容に沿って工事を履行していくことが大切です。
許可取得後に不正行為や不誠実な行為があった場合には、監督処分の対象になることがあります。
群馬県でも、建設業者の不正行為等に対する監督処分について案内しており、請負契約に関する不正行為等が監督処分の対象となることが示されています。
建設業許可を維持していくためには、日々の契約書、見積書、請求書、工事記録、下請とのやり取りなどを適切に管理しておくことも重要です。
許可取得後は、毎年の決算変更届などの手続きも忘れずに確認しておくことが大切です。
下請業者との関係にも注意が必要です
誠実性は、発注者との関係だけでなく、下請業者との関係でも重要です。
元請として工事を請け負う場合、下請業者に対する契約内容の明示や代金支払い、工期の調整など、適切な対応が求められます。
たとえば、下請契約の内容を曖昧にしたまま工事を進めたり、支払条件を一方的に変更したり、正当な理由なく下請代金の支払いを遅らせたりすると、トラブルにつながります。
建設業では、現場での信頼関係がとても重要です。
許可要件としての誠実性だけでなく、実際の事業運営においても、契約内容を明確にし、関係者と誠実に対応することが大切です。
誠実性を保つために日頃から意識したいこと
誠実性は、申請時に急に整えるものではありません。
日頃の事業運営の積み重ねが大切です。
次のような点を意識しておくと、建設業許可の申請や許可取得後の手続きでも安心です。
・契約内容を書面で残す
・見積書、注文書、請書、契約書を保管する
・工事内容や変更内容を記録する
・追加工事は口頭だけで進めない
・請求や支払いの記録を残す
・下請業者との契約内容を明確にする
・資格者や営業所技術者の勤務実態を正しく管理する
・変更があった場合は、必要な届出を確認する
・許可申請では事実に基づいて書類を作成する
建設業許可は、書類上の要件だけでなく、実際の事業運営とつながっています。
普段から契約や書類を整理しておくことで、申請時にも説明しやすくなります。
誠実性でよくあるご相談
行政書士おおうち事務所では、建設業許可の誠実性に関して、次のようなご相談をいただくことがあります。
・過去に契約トラブルがあるが申請できるか確認したい
・役員に過去の処分歴があり、許可に影響するか相談したい
・以前別会社で建設業許可を持っていたが、現在の申請に影響するか知りたい
・営業所技術者や常勤役員等の実態をどう説明すればよいか相談したい
・実務経験の証明資料に不安がある
・許可取得後の変更届や決算変更届を整理したい
・名義貸しに見られないよう、正しい体制を整えたい
誠実性は、抽象的な要件に見えますが、実際には契約、処分歴、申請内容、役員等の状況など、具体的な事実に基づいて確認されます。
不安がある場合は、自己判断で進めず、早めに事実関係を整理することが大切です。
太田市周辺で建設業許可の誠実性についてお困りの方へ
行政書士おおうち事務所では、群馬県太田市を中心に、桐生市、みどり市、栃木県足利市周辺の建設業者様から、建設業許可に関するご相談をお受けしています。
建設業許可の新規申請、更新申請、業種追加、各種変更届、決算変更届、経営事項審査、入札参加資格申請など、建設業許可に関連する手続きをサポートしています。
誠実性の要件では、過去の処分歴、契約上のトラブル、申請内容の整合性、役員等の状況などを確認する必要があります。
「過去の事情が申請に影響するか知りたい」
「名義貸しにならないよう正しい体制を整えたい」
「申請内容に不安があるので事前に確認したい」
「建設業許可を取得した後の管理も相談したい」
このような場合は、お気軽にご相談ください。
行政書士おおうち事務所が、現在の状況を丁寧にお聞きし、必要な手続きや確認事項をご案内いたします。
建設業許可申請について詳しく知りたい方は、建設業許可申請のページもご確認ください。
お問い合わせフォームまたはお電話からお気軽にご連絡ください。

